人生、何が起こるかわからないな。
現実は小説より奇なり。
まさにそれだ。
皆して、悪魔ならなんでも知ってると思い込んでるけど、そうじゃない。
俺にだって知らないことはある。
世界は広いんだ。
むしろ俺の知らないことばかりが、無数に転がってる。
だから、面白いし、追及したくなるんだろう?
「誘いを断ったのをちょっと後悔してたけど、次の日にまたあずきが懲りずにスカウトしに来たんだ」
「……あず兄、頑固だから」
「萌奈ちゃんもな」
「あず兄には負けるよ」
萌奈ちゃんはムッと唇を尖らせた。
どっちもどっちだよ。
幼なじみって似るもんなのかな。
二度目のスカウトで、あずきもムッとした顔つきになってた。
今度は絶対に引き下がってやんねぇぞ、って意気込んで。
『悪魔!俺のものになれ!』
『その口説き文句、どうにかならなったの?……でも、まあ、いいよ』
意気込んでた割に、昨日とは打って変わってすんなり了承されて、あずきは拍子抜けした。
『俺も神亀に入るよ。あんたのお仲間になってあげる』
『……ま、まじで?』
『まじで。……だけど、あんたのためだけじゃない。俺のために、決断したんだ』
もう、同情心は欠片もなかった。



