絶対領域






「暇つぶしに軽く調べてみたんだ」


「バンちゃんは優しいね。スカウトを断っておいて、結局調べてあげるなんて。性格いいね」


「……あれ?もしかしなくても毒づかれてる?」


「なんのこと?」




うん、無自覚ですよね。わかってた。

「性格いいね」が「性格悪いね」って聞こえたのは、俺の空耳だったよ。そういうことにしておくよ。



……でも、俺。

優しくなんかないよ。


正義感というより、同情心に近かった。



天使と一向に会えなくて自棄になりかけてたから、その気分転換を口実に調べた。


あずきのこと、神亀のこと、例の幼なじみのこと。



本当に軽く、さわりだけリサーチして、満足するつもりだった。

……つもり、だったんだ。



「調査して、驚いたよ」



乾いた笑みを貼り付けて、萌奈ちゃんを見据えた。



「あずきの幼なじみが、天使である萌奈ちゃんだったなんて」



プロフィール情報に載った顔写真に、見覚えがあった。


監視カメラの映像に残っていた、あの天使と同じ顔だったのだ。



「……何の巡り合わせなんだろうな」



俺もあずきも、捜してたのは、同一人物。

こんな偶然、そうそうない。