昔のあずきに、今の過保護で優しい雰囲気はこれっぽっちもなかった。
終始、不機嫌。
謎に上から目線。
こんな奴の配下になったら、絶対ブラックじゃん。
社畜なんかに成り下がりたくない。
こういう俺様くんとは関わるだけ無駄。
そう確信して、家に帰ろうとしたら、あずきに腕を掴まれたんだ。
『待てよ!行くなよ!』
……なんだこの、ドラマでよくあるようなラブシーンっぽい感じ。
俺はお前に愛想つかした彼女か。
ってツッコミそうになった。え、ならない?
「あずきは必死になって、俺を誘ったよ。萌奈ちゃんを探すのを手伝ってくれ、って」
「……そっか」
萌奈ちゃんはもどかしそうに笑みを作った。
不格好な作り笑いに、こっちまで苦しくなる。
ちょん、とつついただけで、ボロボロに壊れてしまいそう。
そんな萌奈ちゃんだから、あずきはあんなに死に物狂いだったのかもしれない。
『やっと……やっと、悪魔を見つけたんだ。逃してたまるか』
『だから俺に男色の気は……』
『俺には、悪魔の力が必要なんだ!……なあ、頼む。行方不明になった幼なじみを捜すのを手伝ってくれ。少しでも情報が欲しいんだ!』



