絶対領域





「あ、もうこんな時間か!」


「そ、そろそろ移動したほうが、い、いいかもしれませんね」



時間を確認したみーくんとゆかりんも、ゆーちゃんに賛同する。


いとこの2人について詮索したいのは山々だけど、お喋りに夢中でバンちゃんのショーに遅れてしまうのは嫌だ。



「じゃあ、行こうか」



ここでたむろってたら、他の人の邪魔にもなるしね。



一歩、歩き始めた瞬間。

クラリ、脳が揺さぶられた。


「……っ」


倒れかけて、咄嗟に足で踏ん張る。


今の、何?眩暈?



コスプレのプレッシャーは、もうなくなったと思ってたのに。


やっぱりこの恰好のままいる羞恥心が、残ってるのかな。




「お、おい!ど、どうかしたのか、こら!」



ランちゃんが、みーくんの裾をぎゅっと握りながら、声をかけてきた。


あのランちゃんを心配させるほど、ふらついてた?



「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


「は、はぁぁ!?し、心配なんてしてねぇし!自意識過剰なんだよ!」



……もしや、ツンデレ?

可愛いな。


大分心を許してくれるようになったらしい。いい変化だ。




気を取り直して、恐る恐るまた一歩、歩いてみる。



うん、今度はなんともない。


あ、さっきのは接客を頑張りすぎたせいかも。きっとそうだ。