皆が去ってから、童話喫茶は混雑して大忙し。
あっち行ったり、こっち行ったり。
クラスメイトのミスをフォローしたり。
とにかく大変だった。
でも、クラスメイトとコミュニケーションを取る機会が、普段より格段に多くて、内心喜んでいた。
そうこうしているうちに、あっという間に交代時間になった。
裏方の作業をしている、教室の一角に入る。
ここは、喫茶店のほうとは隔離されていて、お客様からは見えないようになっている。
「矢浦さん、お疲れ様です」
ほっと一息ついていると、白鳥の衣装の生みの親である衣装係の子が話しかけてきた。
なんだか緊張してる……?
「その衣装、素敵に着こなしてくれて、ありがとうございます」
「えっ、い、いや、素敵だなんてそんな……」
お世辞だって、わかってるけど。
作ってくれた人に褒められると、自惚れちゃうよ。
「昨日のことや衣装の件を通して、矢浦さんと関われて嬉しかったです」
たぶん、私のほうが嬉しいって思ってる。
クラスメイトによそよそしくされて、早半年。
実はちょっと諦めてたんだ。
距離を縮めるのは、もう無理かも、って。
文化祭は、最後のチャンスだった。



