端正な顔に残った傷。
肌に滲んだ血痕。
痛くてたまらないはずなのに、痛みが気にならないのは、それ以上に嬉しいからだ。
「信じてたぜ。慎士なら、携帯に気づいて、来てくれるって」
暗い青の瞳に、涙の膜が張る。
「慎士にはいつも助けられてばっかだな」
涙がこぼれる前に背けられた顔を、あず兄は覗き見る。
目尻にくしゃりとシワが寄った。
「ははっ、泣いてんの?」
「泣いてない」
「声、震えてんぞ?」
あず兄が体重を預けて、しん兄はそれを支える。
2人の関係みたいだ。
ねぇ、しん兄。
ちょっとはあず兄を、信じられた?
私は立ち上がって、スカートについた泥を軽く払う。
一足先にハッピーエンドを味わっている、あず兄としん兄を眺めて、ホッと胸を撫で下ろした。
周りでは、残党を伸している。
もう少しで、完全勝利で片が付きそうだ。
「……さてと」
最後に聞かなくちゃ。
直接本人に、今回の目的を。



