絶対領域





目の前に立っている人物に、しん兄は眼を丸くする。



「あ、あずき……っ」




さっきはびっくりしたよ。


支えていたはずのあず兄が、いきなり目を覚まして駆けだすんだもん。



今の今まで意識を失っていたのに、親友がピンチになったら起きて助けるなんて、ヒーローみたいだね。




かっこよすぎだよ、あず兄。




「体は大丈夫なのか!?」


「平気だ。こいつらにいろいろ遊ばれたようだが、弱い奴に何かされても痛くもかゆくもねぇよ」



と言いつつ、早速ふらついてる。

しん兄はすぐにあず兄に肩を貸した。




「……どこが平気なんだ」


「今のはたまたまだっつの。本当に大したことねぇよ」


「嘘を言うな」


「嘘じゃねぇって。お前はどうなんだよ。その手、血だらけだぞ」




あず兄が血だらけの手に触れると、しん兄の表情にようやく痛みが表れる。


手を引っ込めてしまったしん兄を横目に、あず兄の瞼が伏せられた。



「……俺の、ためか」



返事は、ない。

それはつまり、肯定。



あず兄は辛そうに、それでいて優しく笑った。



「ありがとな」