“あの時”以来久しぶりに見る、オリの臨戦姿を視界から外す。
前を向けば、リーダーらしき男が切羽詰まった様子で、落ち着きを欠いていた。
「形勢逆転、だね」
夕方に言われた『形勢逆転、だな』を、そっくりそのまま返してやった。
ちょっとした意地悪だ。
振り出しに戻す前に、私たちとゴールの距離が縮まっちゃったね。
それじゃあ、サイコロを振って、ゴールしてしまおう。
「もう一度言う」
一歩、また一歩。
傷だらけのあず兄の元へ、進んでいく。
「あず兄を、返して」
焦っているリーダーらしき男は、咄嗟にあず兄の体をグイッと引き寄せた。
まだ意識を取り戻しておらず、ぐったりしているのをいいことに、首に腕を回して締め付ける。
「……っ」
心なしか、あず兄の表情が苦しそうに歪んだ。
あず兄の首筋に、ナイフの先端がどんどん近づいていく。
クラスメイトを人質にした時と同じやり方で、私を脅そうとしてる。
バカなせいで、やることが単調なんだ。
同じ手に二度も屈しない!
「こいつがどうなっても……」
いいのかって?
よくないよ。
だからこそ……!



