絶対領域




何食わぬ顔をする私に、リーダーらしき男のイライラはマックスに達した。



「お前ら、そこの女を殺れ!!」



到着したばかりの新加入の輩【ヤカラ】に、親の仇のように命令する。


奴らも、待ってましたと言わんばかりに吠えて、私を鋭く凝視する。



いいよ。

20人全員でかかってきなよ。


返り討ちにしてやる。



金属バットやら木刀やら担いで、20人の大群がこちらに近寄ろうとした。


その時。



ドンッ、ドコッ、バンッ、ダンッ、バコッ!



待ったをかけたのは、盛大に轟く、鈍い響き。


音が消えないうちに、大群の中で数人が倒れた。



反射的に、大群の進行がストップする。



……い、いや、これは私もさすがに動揺する。


どうなってるの?

内輪揉めでも起きた?



私も敵も事態を飲み込めずに硬直していると、空高く何かがが投げられた。


5つの、ヘルメットだ。



「萌奈!」



大群の一番隅にいた、ヘルメットを外した一人が、私の名前を元気よく呼んだ。


私と同じパーマが雨で台無しになっている、綺麗な漆黒の髪に、思わず頬が緩む。



「みーくん!」