絶対領域





「可哀相なのは、お前たちのほうだろ」



リーダーらしき男はクツクツと喉を鳴らした。



「“あいつら”に目ぇつけられるなんて、同情するぜ」



あいつら……?

誰のこと?


妙に胸がざわつく。



単なるはったりだとは、思えなかった。



「それって、どういう……」


詳しく聞こうとしたが、大雨とエンジン音に紛れてしまった。



大量のバイクが、グラウンドに乱入してくる。



現れたのは、いかにも根性がねじ曲がったような奴らだ。数にして、およそ20人弱。


ヘルメットをかぶっていなかったので、既に体は濡れていた。



……ん?

あ、数人だけど、ぽつぽつとヘルメットをかぶってるいい子が混じってる。




「これでまた、振り出しに戻ったな」



リーダーらしき男はふてぶてしくそう言って、これみよがしにナイフを光らせた。




「よかったね、人数だけでも元に戻せて。これであんたたちはまた、屈辱を味わうことになるけど……あ、もしかして、ドMなの?」


「ドMじゃねぇよ!つーか、屈辱を味わうのはお前らだ!!」


「おかしなこと言うね。今日エイプリルフールじゃないよ?」


「知ってるわ!!……くそ、からかいやがって」




からかったつもりないんだけどな。

思ったことを言っただけ。