逆に言えば。
1回邂逅しただけ、一目見ただけ。
たったそれだけのことで、心を奪われたんだ。
相当な衝撃と感動を受けたんだろうな。
どんな人なのか、僕には想像すらできない。
「その人は僕を守るために盾になってくれてたから、顔もあんまり見えなかったし」
「顔も知らねぇのかよ」
「その代わり、後ろ姿はばっちり憶えてるよ!この髪も、その人の髪がふわふわだったから、真似してパーマかけたんだ!」
「んなプチ情報いらねぇし、興味ねぇよ」
世奈くんの毒舌、今日も冴えてるなぁ……。
皆して通常運転だから、今監禁状態だってことを忘れそうになる。
「あと俺が知ってるのは、その人の名前……というか、通り名くらいかな」
あ、やっぱり、翠くんの憧れの人には通り名があるんだ。
翠くんの話を聞く限り、とっても強いらしいし、通り名が付くくらい噂になっていてもおかしくない。
「な、なんて名前なの?ぼ、僕、知ってるかな?」
「知ってるよ」
淡々と言い切った翠くんは、白い歯を覗かせて笑った。
「皆、絶対知ってる」
絶対?
やけに自信満々だ。
有名な通り名なのだろうか。



