絶対領域






「え、えっと、その……ぼ、僕、実は、こ、こういう閉所や暗所がちょっと苦手、なんです」



不良になってからは、苦手意識を少しずつ克服できてきている……つもり、だったんだけど。


都合よく思い込んでいただけみたい。




過去を回想したら、またすぐよみがえって。


萌奈さんの強さと比較して、自分の弱さを浮き彫りにして、僕の中に残ってる昔の面影を再確認して。



自分で自分を追い詰めてしまう。




「ぼ、僕、小学5年生の時にいじめられてて……そ、それで、ずっと引きこもっていたんです」



当時は、今とは真逆で。

閉所や暗所が、好きだった。



家の中の、自分の部屋に閉じこもっているのが、心地よかった。



ちっぽけで狭い、僕だけの領域。


そこに侵入して荒らしてきたり、奪ったりする奴などいない。



僕の味方は、家族と、ユウ。

それ以外、要らなかった。




「で、でも、引きこもって、守られているだけの日々を当たり前だと思ってる自分が、こ、怖くなりました。そ、そしたら、閉じこもっていた薄暗い部屋も、に、苦手になっちゃったんです」



たどたどしくて、ぎこちない話し方。


言葉も表現も、どこかおかしい。



こんなんでちゃんと伝わっているのか不安だけれど、3人は真剣に耳を傾けてくれた。