すごいな。
強いな。
かっこいいな。
何もかも、僕にはまだ足りてないものばっかりだ。
僕はひどく弱くて、不甲斐なくて。
いつまで経っても、変われない。
「そのためには一刻も早くここを脱出して、あいつらを懲らしめなきゃいけないんだけど……」
「敵の目的がわからねぇし、策も立てづれぇよな」
世奈くんの意見に、萌奈さんと翠くんが同意を示す。
「せめて今回の騒動の真意がはっきりすれば……って、ゆかりん?」
「は、はひぃっ!?」
ぼうっとしてたせいで、変な声が出ちゃった!
は、恥ずかしい!
顔を上げると、萌奈さんが僕の顔を覗き込むように見つめていた。
「大丈夫?」
「……え?」
「顔色悪いよ?」
優しい口振りとは裏腹に、顔つきは不安で彩られている。
「風邪か?」
「えっ、風邪!?紫、辛いなら言えよ?なんとかするから!」
「なんとかってなんだよ。この状況じゃ何もできねぇだろうが」
「か、風邪じゃないよ!」
世奈くんと翠くんの誤解が大ごとになってしまう前に、きちんと訂正しておく。
体調はいたって良好。
だけど、萌奈さんがあんな表情をするほど、今の僕は青ざめているんだろうな。
それは、きっと。
身体より、精神的なもの。
僕の心が、脆いせい。



