絶対領域





もしかして、さっきの女子高生は、萌奈さんのクラスメイトなのだろうか。


どうりで「矢浦さん」なんて他人行儀な呼び方だったわけだ。




「いじめとかじゃ、ないんだよな?」


「違う違う!それはほんとに違う!……なんでみーくんもせーちゃんも、そっち方向に考えちゃうかなぁ」



翠くんが心配そうに尋ねれば、速攻で頭を振った。



あ、世奈くんも同じことを聞いたんだ。


でも、案ずる気持ちもわかる。

クラスに馴染めてないって聞くと、ついマイナスなことを想像しちゃうんだよね。



――僕と同じかも、って。




「いっそいじめだったら、もっと楽に解決できたんだけどね」



……え。

今、萌奈さん、ボソッと怖いこと言った?



いじめだったら、楽だった!?


ど、どう解決する気ですか!?



やはり僕の思考回路も、悪いほうへ物事を考えてしまうようです。




「そういうわけで、明日は絶対学校に行かなきゃいけないの」



栗色の双眼に、灯る。

美しくも熱いきらめきが。



「せっかく仲良くなれるかもしれないチャンスを、みすみす逃してられない!」



倉庫内は薄暗いはずなのに、萌奈さんが輝いているように見えたのは、錯覚だろうか。



眩しくて、眩しすぎて。


僕には少し痛いくらい。