絶対領域





「本当は友達になりたいけど、まだなれてないんだ」



ど、どういうこと?

萌奈さんなら、すぐに誰とでも仲良くなれそうなのに。


やっぱり信じられない。



目をパチクリさせる僕と翠くんに、萌奈さんはやるせなく頬を緩めた。



「私ね、実は留年してて、みーくんやゆかりんよりもひとつ年上なの」


「留年!?」



また声が出てしまった。



萌奈さんって、大人っぽくて視野が広くて。


まるでお姉さんみたいだな、って勝手に尊敬していた。



それは実際に世奈くんという弟がいるから、そう感じるのかとも思っていた。

けど、本当に僕より年上だったからなんだ。



びっくりしたけど、なんとなく納得しちゃった。




年齢がいっこ上ということは、双雷でいうと凰さんと同い年ってことだよね?


……うーん、それはそれで信じがたいなぁ。



凰さんと比べたのが間違いだったのかも。

あの人はちょっと浮世離れしてるし。




「そのせいで、クラスメイトがよそよそしくて……」



知らなかった。


僕に「ゆかりん」ってあだ名を付けてくれるくらい、誰にでも親しくしてくれる萌奈さんが、クラスメイトとの関係性に悩んでいるなんて。



「留年してる私との接し方に戸惑ってるクラスメイトを見たら、私も話しかけづらくなっちゃって。気軽に挨拶もできないんだよね」