空気が、どんよりと重くなる。
……嫌、だなぁ。
この感じ、苦手だ。
縛られた腕と足。
閉鎖された暗所。
何もできない、弱い自分。
嫌でも思い出してしまう。
ユウを頼って、守ってもらってばっかりいた、昔の大嫌いな自分を。
いつも逃げて、うずくまっていた。
今みたいに。
せっかく、不良になって、ちょっとは強くなれたのに。
変われたと、思ってたのに。
単なる幻想だったのかな?
「……くしゅんっ」
「っ!ね、姉ちゃん!?」
ふと、可愛らしいくしゃみが、倉庫によく響いた。
今の……萌奈さん?
一早く反応した世奈くんが、何度も呼びかける。
「姉ちゃん!」
「……せーちゃ、」
ほっとした。
萌奈さんの意識が戻って、よかった。
「大丈夫?痛くねぇか?寒くねぇか?」
「平気だよ。……というか、寒いのは皆同じでしょ」
萌奈さんは鼻をすすって、過保護な世奈くんを慣れたようにあしらう。
拘束されていることを瞬時に把握して、横になっていた上半身を起こした。
外を窺えないから、今の時間はわからないけど、結構時間は経ってるよね。
萌奈さんの言う通り、ちょっと寒いし。
秋の夜は冷える。



