「今回のも、新人いびりだと思うか?」
「違う、だろうな」
神妙な面持ちで問いかけた世奈くんに、翠くんが悩ましげに口を曲げた。
「ぼ、僕も、違うと思う……」
この状況から考えられるのは、これが新人いびりではないこと。
それならば、今回の乱闘は、何だったんだろう。
不良たちを操る黒幕がいる?
それとも、新手?
本当の狙いは、僕たちではないの?
うーん……どれもそれっぽいけど、そうじゃない気もする……。
どれだけ考えても、答えは一向に出なかった。
「何であっても、姉ちゃんを傷つけたあいつらを許さねぇ」
「人質になった子って、萌奈の友達だよな?萌奈、すっげぇ辛そうだった」
体を拘束されていなかったら、世奈くんも翠くんも、萌奈さんのそばに寄って抱きしめていただろう。
そうできないのがもどかしそうに、2人は表情を陰らせていた。



