せーちゃんの態勢が整う前に、リーダーらしき男は次の攻撃に移ろうとする。
ダメだ。
せーちゃん、気づいてない。
このままじゃ……!
「ごめん、せーちゃん」
「え?ね、姉ちゃ……!?」
「肩、かりるよ」
迷っている暇などない。
私はせーちゃんの両肩に手を置き、勢いをつけてジャンプした。
浮かせた体を斜めにして、右足で空を切る。
またしてもポケットから何か取り出した、リーダーらしき男の手に、私の右足が直撃した。
「いっつ……!」
持っていた物が、手の中から離れ、遠くに飛ばされる。
「あれは……スタンガン!?」
「チッ、バレちまった」
驚くみーくんに、リーダーらしき男は蹴られた手を庇いながら、奥歯を食いしばる。
敵側にも、保険があったんだ。
わざとらしくナイフで脅そうとしたのは、単なる演出。
本当の奥の手を忍ばせておくための、フェイクに過ぎなかった。
今思えば、2つあるポケットはどちらも膨れていて、何か隠しているのは明白だった。
どうしてこんな単純なトラップに、騙されてしまったんだろう。