20人もいた敵が、あっという間に半分以上片付いた。


対して、せーちゃんとみーくんとゆかりんは、息ひとつ乱れていない。

若干1名、半泣き状態だけれども。



あとは時間の問題だろう。



私は一歩も動いていない。


保険をかける必要もなかったかな?





「ガキのくせにやってくれんじゃねぇか」


「ガキより弱いあんたらは、何なわけ?赤ちゃんとか?パパとママ呼んできてやろうか?」



息巻くリーダーらしき男に負けじと、せーちゃんは上から目線に嘲笑う。



ガキ扱いしていた相手に仕返しされ、リーダーらしき男は青筋をひくつかせる。


猛り立った衝動に駆られたみたいに、一瞬でせーちゃんとの距離を詰めてきた。



目にも止まらない速さで、せーちゃんの脳へナイフを突き出す。



「っ!」


刃が触れるぎりぎり。

せーちゃんは反射神経の良さで、なんとかかわした。




ほのかに焦燥を滲ませる、せーちゃんの横顔。


その奥に、一瞬、捉えた。



リーダーらしき男の、怪しげな笑みを。




ぞわり、と悪寒に似たものが、背筋を走る。

嫌な予感がする。



ナイフを避けた際に、せーちゃんの体が少し横にずれて、盾の向こう側がわずかに見えた。



リーダーらしき男は誰にも気づかれないよう、こっそりと、慎重に。

ナイフを持っていないほうの手を、ナイフを隠していなかったほうのポケットに入れていた。




嘘。

まさか。


もしかして……!



「……バカだったのは、私だ」