前方でも、一人、また一人と敵が倒れていく。
強固な盾を破り、領域を侵した者は、未だに一人としていない。
「ガハァ……っ!」
「っうぐぁ!」
「姉ちゃんには、指一本触らせねぇ」
中学生にして幹部になったせーちゃんを、なめないで。
神亀の幹部メンバーの中では、弱いほうかもしれない。
だけど、神亀の力は、平均以上。
他の暴走族と比べものにならない。
それこそ、ナンバーワンだかトップだか名乗っているグループにだって、そう簡単に負けやしない。
そんな神亀の、幹部の一人。
私の弟。
矢浦世奈は、あんたたちなんかより、ずっと強い。
鉄壁の守備の代名詞と謳われる神亀を相手に、ガラの悪い連中はどこまで食い下がれる?
「おりゃあああ!!」
身のほど知らずが、また一人。
鉄パイプを乱暴に振り回しながら、せーちゃんに迫ってくる。
せーちゃんは鉄パイプの動きを読み、左腕で易々と受け止めた。
「どりゃあああ!!」
すると今度は逆方向から、敵が一人、せーちゃんを狙って突っ込んできた。
剣を持つように前に構えられた鉄パイプを、右手で鷲掴みにする。
その状態のまま右手を少し後ろに引き、全力で押し戻した。
鉄パイプは敵のみぞおちに、クリティカルヒット。
敵は即ダウンした。
1秒の余地もなく、ほとんど同時進行で左腕を外側にずらし、相手のバランスを崩す。
せーちゃんはその隙を見逃さずに、お腹の下らへんを蹴り上げた。



