絶対領域






「ぺちゃくちゃ喋ってんじゃねぇぞこら!!」



膝をついていたリーダーらしき男が立ち上がり、ポケットから凶器を取り出した。


隠し持っていたのは、折りたたみ式のナイフだった。



他の連中も次々と、鉄パイプやナイフを片手に、臨戦態勢に入る。




「ナイフごときで、俺たちを殺れるとでも?」


「調子に乗るな、クソガキども」


「考えが甘ぇんだよ」



既に荒立っているリーダーらしき男に、以前は全く効いていなかったせーちゃんの挑発が突き刺さる。


しまわれていたナイフの刃が、あらわになった。



ナイフで3人をどうにかできるか。

試してごらんよ。




「お前ら、かかれっ!!」




怒り任せに発砲された、どでかいかけ声。


それを合図に、ガラの悪い連中が一斉に襲いかかってきた。




一度目や二度目とは異なり、三度目の新人いびりは、敵側に余裕はない。


彼らにとって、新人いびりは遊びやゲームと同価値だったはずなのに。



今回はむしろ、どこか焦って、気張っている。



これじゃあただの乱闘だ。


楽天的で無神経な雰囲気は、どこにもない。