絶対領域





背中越しに届く、せーちゃんの声。



ちょっとかすれていて。


それでいて、凛としている。




『姉ちゃんを犠牲にして、自分だけ安全なところにいるのは、もう……嫌だ!!』



忘れてないよ。

ちゃんと、憶えてる。


せーちゃんに苦しそうな叫びをさせてしまったのは、紛れもなく、私。





「俺が姉ちゃんを、守ってみせる」


「俺も守るよ!」



右側にも、小さな盾ができた。


横を向いても黒い髪しか見えないけれど、やる気満々な表情をしているみーくんが目に浮かぶ。



「ぼ、ぼ、僕も……!精一杯頑張って、守ります!」



今度は、左側に新しい盾。


声音は弱々しいのに、背中からは勇ましさを感じる。




「せーちゃん、みーくん、ゆかりん……」



幹部クラスの強さを持った、男の子。

3人もいるなら、きっと大丈夫。


私を庇いながらでも、傷一つ負うことなく戦える。




……だけど、私だって、せーちゃんとおんなじだよ。


自分の身の安全のためだけに、3人を犠牲にしたくない。




「わ、私は……っ」

守られてるだけなんて、嫌だ。



そう、わがままをぶちまけようとして、口をつぐんだ。



前回は、私が囮になる作戦を、せーちゃんとあず兄に無理強いした。


今度は私が、言うことを聞く番だね。