絶対領域





……あー、やめやめ。

疑問がありすぎて、面倒になってきた。


初めから、敵の思考を汲み取れるわけなかったんだ。




正解は、こいつらから聞き出せばいい。




「生意気な女だな」



リーダーらしき男が、物々しく舌打ちをする。


ポケットに手を突っ込み、何かを取り出そうとした。



「なめてんのはどっちだよ。今回は前みてぇには……」



喋っている途中で、私は男の片足を素早く払った。


意表を突かれ、男は膝をつかざるを得なくなる。



「ポケットに、凶器でも隠し持ってるんでしょ?わざとかって疑いたくなるくらい、わかりやすいね」



言葉通りに見下せば、男の顔はみるみる赤く歪んでいく。



バカだなぁ。

そういうのは悟らせたらダメだよ。


わかっちゃったら、ポケットから出させるわけないじゃん。




「姉ちゃん、さすが!かっこいい!」



せーちゃん、空気読もうか。


注意しようとしたら、急にせーちゃんが私の前に立ちはだかる。



「だけど、」


視界いっぱいにパーカーが占領して、ガラの悪い連中が見えなくなる。



「危ないから、下がってて」



でも、と反論したがる私を見抜いて、せーちゃんは続けて言う。



「今回は、前みたいなことすんなよ」


「せ、ちゃん……」


「もう、姉ちゃんを置いて、逃げたくねぇんだ」