絶対領域





こんなにも可愛く、素敵に、イメージしてくれたんだ。



そんな嬉しいこと言われちゃったら、さ。


似合うとか似合わないとか、ずっと言い訳がましく考えてたことが、バカバカしく思えてきちゃうね。




「わかった」



弾かれたように、女の子の顔が上がった。

昼休み振りに視線が交わる。


私は照れ臭さを隠しながら、衣装を受け取って、微笑んだ。



「試着、してくるね」




着こなせないかもしれない。


私が着ることで、可愛さが半減しちゃうかもしれない。



それでも、衣装係の人たちが託してくれたんだ。



私は私なりに、この衣装を魅せられるよう、白鳥になりきる。


それが、私の仕事。

やるべきことだ。





文化祭準備は、滞りなく順調に進んだ。



試着してみた反応は……想像通り、イマイチ。

皆、ぼうっとしたり、ポカンとしたり。


お世辞で「可愛い」「綺麗」って褒めてくれた人もいたけど、その優しさがかえって辛かった。




飾り付けも、衣装の調整も、メニューの確認も、全て万端。


あとは、明日になるのを待つだけだ。




準備が完全に終了した時には、空はオレンジ一色に塗りたくられていた。