絶対領域





大変、だっただろうな。

徹夜したり、何度も縫い直したりして。


頑張ったんだろうな。



それなのに、その努力を無駄にするような真似、したくない。




「……ひとつ、聞いてもいい?」


「は、はい!」


「どうして私にこの衣装を選んだの?」



シンデレラとか、白雪姫とか、赤ずきんとか、魔女とか。

コスプレ衣装は他にもたくさんあるのに。


いや、白鳥以外の衣装でも、着こなせる自信は全く持ち合わせていないけど。



なぜ、白鳥に決めたの?

消去法?




数拍置いて、女の子はたどたどしく返答する。



「白鳥の衣装を作ってる時に、天使が頭に浮かんだんです」



昼休みにも、天使と悪魔の噂について話してたよね。


確かに、この白鳥の衣装は、天使に似てる。



「その時、なぜか、連想しちゃったんです。矢浦さんが、白い翼を羽ばたかせて、湖のほとりで踊っているシーンを」


「……え?」


「あっ、すみません!勝手に妄想……っていうか、イメージしちゃって!」



女の子は両頬を紅潮させて、申し訳なさそうにする。



じゃあ、この衣装は。

私のイメージで、私のために、作ってくれたの?