絶対領域





指示を聞きに行こうとした、が。



「きゃあ……っ!」



すぐ近くから悲鳴が聞こえ、反射的に振り返る。


私の横で作業していた女の子が、ガタつく椅子から落ちかけていた。



危ない……!

即座に、手を伸ばした。



「っ、……い、痛く、ない……?」


「大丈夫?」


「……え?」



恐る恐る目を開けた女の子に、優しく声をかける。



「や、や、矢浦、さん……!?」

はい、矢浦です。



「ケガしてない?」


「は、はい!大丈夫です!」



女の子は驚きながら、こくこくと頷いた。



転落した女の子を支えようとして、尻もちをついちゃったけど……ケガしてなくてよかった。


私の体格がよかったら、かっこよくお姫様抱っこをして助けられたのに。




「た、助けてくださって、ありがとうございます」


「どういたしまして。その椅子、グラグラしてるから、違うのと変えたほうがいいと思うよ」


「は、はい……!」


「気をつけてね」




敬語はやめてほしいけど、まいっか。


これ以上意見したら、さすがに偉ぶってると思われそうだし。



どうしたら、フレンドリーにコミュニケーションが取れるんだろう。