絶対領域





ポイッと捨てるように返ってきた紙パックの中には、もう1滴も残っていない。


前言撤回。

あず兄は性格悪い!




「嫉妬は見苦しいぞ」


「シン、もっと言ってやってぇ!」


「うっせー!間接キスなんかさせてたまるか!」



しん兄とゆーちゃんの辛辣なコメントに、あず兄はむくれてそっぽ向いてしまった。


イケメンイケメンって騒いでたクラスの女の子たちに、この素のあず兄を見てもらいたい。




「そういえば、あずき、告られたんだって?」



ガヤガヤとした空気が、バンちゃんの一言で、一変して。

気まずそうに俯くあず兄に、皆が集中した。



「ふーん?告白されたんだぁ?」


「またか。どうせ振ったんだろ?聞き飽きた」



ゆーちゃんは、エサを見つけたみたいにニヤニヤする。


正反対に、しん兄は、どうでもよさげにわざとらしくため息を吐いた。




「その現場に萌奈ちゃんもいたんだろ?」


「そこまで知ってるの!?」



バンちゃんの情報網、半端ない。

まさか、一部始終見てた?




「相変わらず、情報早ぇな……」


「そこを買って、俺をスカウトしたんだろ?」


「まあな」



不敵に一笑するバンちゃんに、あず兄は敵わなそうに眉尻を上げた。