右手にあず兄、左手にしん兄。
しっかり腕を掴んで、廊下を進んでいく。
居心地の悪い教室を遠ざけたくて早足だったのに、いつの間にか走っていた。
私が走れば、つられてあず兄としん兄も引きずられるわけで。
重厚な扉を開いて、屋上に踏み入れた頃には、私たちは息を荒くしていた。
「……え、走ってきたの?」
「めっちゃ疲れてるじゃ~ん」
既に屋上でくつろいでいたバンちゃんとゆーちゃんが、呆気に取られている。
「何かあった?」
「何も!何もなかった!」
不思議がるバンちゃんに、私は食い気味に否定した。
クラスメイトの私に対する苦手意識を、再確認しただけ……そう、それだけ……。
虚勢を張っても、やっぱりへこんじゃう。
「よくわかんないけどぉ、はい、これぇ」
「……く、くれるの?」
「うん~、特別だよ~」
ゆーちゃんの隣に座ると、飲みかけのいちごミルクを差し出された。
ちょうど喉が渇いてたんだよね。
ありがたく紙パックを受け取ろうとしたら。
「ありが……あっ!!」
「うま」
私とゆーちゃんの隙間から伸びてきた手に、奪われた。
「ちょっと、あず兄!!」
「これはモエモエにあげたのぉ!アズにじゃな~い!」
犯人は、あず兄。
私とゆーちゃんの声を無視して、あず兄はいちごミルクを飲み切ってしまった。



