絶対領域





誤解を解きたいのは山々だけど、盗み聞きしていたのをバラしたら、ただでさえ底辺な印象がさらにガタ落ちしちゃう。


あーもうっ、何この悪循環!



たぶん怒ってるって思われてるよね。

そんなことないよ、怒ってないよ、なんなら会話に入れてほしいよ!!


……って、本音を教えられるくらい、勇気があればなぁ。



今朝生徒が多くいる中で、あず兄に告白した女の子は、本当にすごい。尊敬する。


私にも、あんな勇気が欲しい。




どう対応するのが正解か、悶々と考えていると。


ガラッ、と後方の扉がスライドされた。



「失礼する」

「萌奈、来たぞ」


救世主、来た!



教室を訪ねたしん兄とあず兄の元に、すぐさまお弁当を持って駆け寄る。



「行こう!早く!」


「あ、ああ……」

「何をそんな急いでるんだ?」


「いいから!」



逃げるが勝ちだ。


怪訝そうな2人の腕を引っ張って、早々と教室から距離を取った。





午後は授業がなく、文化祭準備の時間に充てられる。


そこでクラスに貢献して、好感度アップを狙おう。


それしかない!




午後の正念場に備えて、昼休みのうちにたっぷり心を休めておかないと。