絶対領域






「白鳥と魔女の衣装って、なんとなく天使と悪魔っぽいよね」


「あー、確かに!言われてみればそうかも!」


「というか、それ、ちょっとイメージして作ったでしょ?」


「あは、バレた?」


「やっぱり~!」


「だって、天使と悪魔っぽくしたほうが可愛くなると思ったんだもん」




女の子4人が、楽しそうに盛り上がる。


相反して、私はどんよりとする。



白鳥と魔女に、天使と悪魔っぽさをプラスしたってこと?

え、それ、大丈夫なの?


めちゃくちゃ可愛い衣装になっちゃうんじゃないの?



それを私が身に纏うの?


無理。普通に、無理。

見た目そこそこで、ぼっちな私には、荷が重い。




「この街に天使と悪魔がいる、っていう噂を思い出して、つい」


「あー、あの噂ね」


「それなら、女子用の衣装じゃなくて、男子用の衣装として新しく作っちゃえばよかったのに」


「時間的にも材料的にも、作れそうになかったんだよ~」




肩を落として悩んでいるうちに、別の話題が中心になっていた。




――この街には、天使と悪魔が棲んでいる。




この街の住人は、表の世界でも裏の世界でも、その噂を気に入っている。



噂を知るほとんどが、会ったこともないくせに。


嘘か誠か、関係なく、広めている。