絶対領域








メンタルをやられた朝は、過ぎて。

なんとか午前中の授業をやりきった。



キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴り渡る。


昼休み開始の合図だ。




カバンからお母さんお手製のお弁当を取り出し、机の上に置く。


あとは神亀の誰かが迎えに来るのを待って、一緒に屋上に行くだけ。



「屋上に行くことさえ、一人で行動させてくれないなんて……」



いっつも思うけど、つくづく心配性すぎる。

どこの箱入りお嬢様だよ、私は。



愚痴を言いつつも、おとなしくお迎えを待つ。


私の斜め後ろでは、クラスの女の子4人が、4つの机をくっつけて、昼食を摂っていた。



「いっただきまーす!」



友達同士で仲良くお昼ご飯、いいなぁ……。


羨みながら、暇つぶしに耳を傾けてみる。




「衣装、できた?」


「あとは白鳥と魔女の衣装だけだよ」


「えー、すごーい!頑張ったね!」


「でも、もう明日だから、早く仕上げちゃわないと」




話の内容は、やはり、明日の文化祭のこと。


そういえば、あの4人は衣装係だったっけ。



「白鳥の湖」の白鳥と、「白雪姫」の魔女の衣装。

……どちらかを、私が着るかもしれないんだよね。


衣装係の子たちが頑張って作ってくれた物を、素敵に着こなせる自信が全くない。



今からでも誰かに変わってほしいよ。