絶対領域





私のために、こんな時まで真面目にならなくたっていいんだよ。


ヤンキーのくせに、年下の言うことを律儀に聞いて、バカみたい。



もっと自分の時間を、自分のために使ってよ。




「学校には着いてるんだし、送り届けなくたって平気なのに。教室に行くまでの間で、何かに巻き込まれるとでも思ってるの?」



それこそネガティブに考えすぎだよ。


学校ほど代わり映えしないところはない。

むしろ、クラスに特別な出来事が起こってほしいくらいだ。




「自己満足で、いいんだ」



ふわり、と頭のてっぺんをかすめる、温もり。


あず兄の大きな手が、優しく私を撫でた。



「心配するのは、俺の……俺たちの自由だろ?」



そう言われてしまえば、もう何も言い返せない。




あず兄とせーちゃんも、“あの時”に縛られている。


実力を知っても、私に囚われ続けている。



いつになったら、どうしたら。

2人を解放してあげられるんだろう。