絶対領域





周りで、冷やかしの声と騒ぎ立てる声が、一緒くたになって響いた。


文化祭の浮足立つ空気と相まって、余計にうるさくなる。



一生懸命に告白をした女の子は、気恥ずかしくなって、身を縮めてしまった。




あず兄の表情が、ほんの少し、軋む。


右腕にじわりと、あず兄の手の熱が滲んだ。




「ごめん」



たった3文字の低音は。

周囲を静寂で包み、女の子の顔を上げさせた。




「俺、好きな奴がいるんだ。だから、気持ちには応えられない」


「……そう、ですか」


「でも、好きって言ってくれて、嬉しかった。ありがとな」


「……っ、いえ、こちらこそ聞いてくださってありがとうございました……!」




切なそうに微笑むあず兄に、女の子は頭を下げて、校舎へ走り去っていった。



きらり、と。

去り際に見えた女の子の涙は、とても綺麗で。


つい見惚れてしまった。