……そう、我慢、してたんだ。



姉ちゃんのそばを離れた時から今の今まで、迷いが消えてはくれなかったこと。


本当にこれでよかったのか、と気が気でなかったこと。


弱くても強くても、どっちだって、姉ちゃんを独りにさせたくないこと。



あの場にいた誰よりも心配してたことも、悟られないように必死に忍ばせていた。





「姉ちゃんのバカ!アホ!」

「せ、せーちゃん?」


こらえきれなくなって、叫んだ。



でも、口から出てきたのは、小学生みたいな悪口ばかりで。


自分がガキであることを、痛感させられた。




「なんでもかんでも独りで抱え込むなよ!自分だけでどうにかしよう、なんて考え、やめろよ!」



一度、吐き出せてしまえば。


止まらない。

止められない。



「で、でも、さっき見たでしょ?私、結構強いんだよ。それに、こうして何ごともなく……」


「強さなんか、関係ないっ!!」



あずき兄さんの腕の力が緩み、わずかに体を離した姉ちゃんが、俺を見据える。


なだめるような微笑なんか、すんなよ。



そんなの、結果論に過ぎないじゃないか。



姉ちゃんより強い奴があそこにいたら?またこんなことがあったら?


……この苦しさを、繰り返すの?




「姉ちゃんを犠牲にして、自分だけ安全なところにいるのは、もう……嫌だ!!」