絶対領域





あまりに自然な態度だから、ここで新人いびりがあったことを一瞬忘れてしまった。


だって、てっきり、姉ちゃんは自分が強いことを隠すと思った。

今までそうしてきたみたいに。



……いや、もしかしたら、姉ちゃんは隠していたわけじゃないのかもしれない。


ただ聞かれなかったから。

教える必要がなかったから。


それだけだったのかもしれない。



姉ちゃんなら大いにあり得る。





「……ふっ、あははは!!」


唐突に笑い声が響いた。



「お、オウサマ?」


「アメージング!ファンタスティック!実に面白い光景を見させてもらった。萌奈氏、感謝する」


「……へ?あ、そ、それはどうも?」



派手やかにゆったりと拍手する凰に、姉ちゃんはポカンとする。


凰の笑いにつられて、神亀も双雷も次々と噴き出した。




「ほんとすごいな、萌奈!かっこいいよ!」


翠は純真無垢な眼差しで、姉ちゃんを見つめて。



「僕も萌奈さんみたいに強くなりたいな……」


紫は、姉ちゃんの強さに理想を描いて。



「こ、これじゃあ、俺の出番がねぇのも仕方ねぇな!」


蘭次郎はなぜか上から目線に、腕を組んで。



「萌奈の行動力はすごいな」


慎士兄さんは、半分呆れながら褒めて。



「ははっ、新人いびりしてきた不良にちょっと同情しちゃうな」


万さんは面白おかしく笑い飛ばして。



「モエモエやっば~、惚れちゃうかも~」


悠也はわっかりやすい嘘をついた。