絶対領域





姉ちゃんは片が付いたのを確認してから、パンパン、と両方の手のひらを擦り合わせた。


近づきがたい、洗練された雰囲気が、徐々に柔らかくなっていく。



「せーちゃん、あず兄、待ってたよ」



いきなり、姉ちゃんの栗色の双眼がこちらに向けられた。


俺たちが来てたこと、気づいていたんだ。



傷は……ひとつもない。

さっきと全く変わってない。


俺の知ってる、姉ちゃんだ。



ホッと胸を撫でおろす。


隣のあず兄も、安堵の息を漏らしていた。




「双雷の皆も来てくれたんだ。ありがとうね」


「あ、いや、来ただけで何もしてないし……」



今度は反対側にいる双雷のほうに声をかけた姉ちゃんに、翠は未だに困惑しながらも謙虚に言う。


あは、と姉ちゃんの表情が弱々しくほころびた。



「ごめんね、私が一人で終わらせちゃって」




違ぇ!絶対そこじゃねぇ!

翠が言いたかったことは、そういうことじゃねぇよ!



思わずそうツッコミしたくなるくらい、姉ちゃんの誤解が斜め上をいっていた。


そういう天然なとこも好きだけどさ!!