ガラの悪い不良たちが立ち上がる気配は、ない。
闘争心をくじかれたり、気を失ったりして、完全なる敗北を叩きつけられたのだ。
「……これを、萌奈が一人で?」
思わず、あずき兄さんが独白をこぼした。
その疑問は、この場に駆けつけた全員の脳内を巡っていることだろう。
少なくとも、敵は20人近くいた。
なのに、それを全部、片づけちまったのか?
あの華奢な姉ちゃんが?
もし、本当にそうなのだとしたら。
異質で、異色な、圧倒的な強さが、姉ちゃんの中に在る。
生まれてからずっと一緒にいたのに、気づかなかった。
姉ちゃんのことは全部知ったつもりでいたけど、実際そうでもなかったんだ。
不思議と、怖くはなかった。
ただ、心臓の裏側に、またひとつ積もっていく。
自分の弱さへの、自責が。



