姉ちゃんが心配だから。
そういう理由じゃなくて。
普通なら敵対してる暴走族が困ってるから、協力するのか?
……変な奴。
だけど、すげぇ心の広い奴。
あずき兄さんとはまた違う、総長の在り方を見せつけられたようだ。
「……あ、りがと」
小さく呟いたお礼に、翠はまた笑った。
こんな奴も、いるんだな。
ずるい俺とは、似ても似つかない。
「はんっ、俺らに頭下げて、お前にはプライドがねぇの……っいたたた!!」
「ソーリー。今のはただの雑音ゆえ、気にしないでくれたまえ」
嫌みったらしい蘭次郎の耳を、凰が思いっきり引っ張った。
蘭次郎は相変わらず、翠の背中にべったりだ。
「あ、あの、萌奈さんがどこにいるかはわかってるんですか?」
紫がおずおずと手を上げ質問してきた。
俺とあずき兄さんで、さっきまでの出来事をできるだけ具体的に、かつ簡潔に説明する。
その間に、バイクでかっ飛ばしてきた慎士兄さん、万さん、悠也がこの場に到着した。



