絶対領域





不意に、ズン、と。

頭に重みが落ちてきた。



「世奈」



あずき兄さんが名前だけ呼んで、俺の頭の上で手を2回弾ませる。


ほんのちょっとだけ、心が軽くなった気がした。




……そうだ。

こいつらを恨んだって、仕方ない。


本当の敵は、新人いびりを実行してる不良どもだ。





「萌奈が、新人いびりに巻き込まれた」


「えっ!?」



俺の代わりに、あずき兄さんが返事をすれば、翠の表情が強張る。



気に入らないけれど、翠も俺と同じ。

姉ちゃんを想ってる一人なんだ。




『それなら、仲間と一緒に急いであいつのところに戻って、あいつを叱るべきだろ?独りでなんとかしようとするな、ってな』



俺が今、すべきこと。


俺たちが今、したほうがいいこと。



姉ちゃんのためなら、小さなプライドだって簡単に捨てられる。