純真~こじらせ初恋の攻略法~

「そうだけど……なんで?」

藤瀬くんは覚えているだろうか。

私が話したあの庭のことを。

「これ……似てるんです」

「なにに?」

「私がこの仕事につきたいと思わせてくれた庭に」

「……そうなんだ?」

ぎこちなく、それでも確実に。

藤瀬くんは笑った。

まるで『覚えてるよ』とでもいうかのように。

私が目指しているものを作り出せる人がここにいる。

それが藤瀬くん。

私が彼のアシスタントを精一杯やろうと決める理由は、それだけで十分だ。

しょせん過去は過去だし変えられもしない。

戻りもしないし忘れられない。

でも、全てが無駄な訳ではなく、私と藤瀬くんは新たに今出会った。

私は彼を支えながら勉強し、自分らしい仕事を手掛けるために。

だから。

「ありがとう……」

小さく呟いた言葉が、彼に届かなくても構わない。

「私、本気で藤瀬くんのアシスタント頑張りますっ」

藤瀬くんにそう宣言すると、私は二人に頭を下げて『お疲れ様でした』と言い残し会社をあとにした。

一大決心をした私は、帰り際に『藤瀬くん』と呼んでしまったことで、彼が真鍋さんに尋問を受けたなんて知る由もなかった。