純真~こじらせ初恋の攻略法~

まだ1日目だというのに、真鍋さんの引き続き量が半端ではない。

もう頭はパンパンになるし、メモ帳は走り書きで真っ黒だ。

藤瀬くんがどれだけの仕事を抱えているのか。

会社やクライアントがどれだけ藤瀬くんに期待しているのか。

嫌というほどわかる。

たった1週間という短い期間で、私は彼をサポート出来るのだろうか……。

一気に責任がのしかかり、頭が痛くなりそうだ。

「橘さん」

呼ばれて顔を上げると、藤瀬くんが頬杖をついてこちらを見ていた。

「初日から残業してくれるわけ?」

「残業……?」

なんの事やらと返すと、藤瀬くんはふっと笑って壁の時計を指さした。

「もう定時過ぎてるよ」

「あ……」

時計は18時10分を指している。

「今後、ありえないくらい働いてもらわないと行けない時が来るからさ。帰れるうちに帰っといたら?」

確かに藤瀬くんの正式アシになったら、ありえないくらい働かされそうだ。

「真鍋さん、せっかくのアシにまた逃げられたら困るんで、しっかり時間見てやってよ」

「ごめんね、橘さん。今日はもう帰りましょう?」

真鍋さんは何も悪くないのに、そんな言い方しなくても……。

「藤瀬くん、『また』って、私はあなたから逃げるんじゃないわよ?知ってるでしょ?」

「また逃げるって言うのは真鍋さんの事じゃないよ」

「…………」

なんで私を見てるのよ。

その視線が疎ましくて、私はそそくさとデスクのファイルを片付け始めた。