純真~こじらせ初恋の攻略法~

私はすっかり萎縮してしまった。

それと同時に、どうして初対面である彼から威圧的な態度を取られなければならないのか。

その怒りと不安を受け流すことができず、唇をキュッと結んだ。

その私の表情をみたエースさんは、ははっ、と乾いた笑いを漏らした。

「そうかそうか、名前ね。俺のことなんか何も知らないもんな、橘茉莉香さんは」

笑っているのに笑っていない。

彼はそんな笑みを漏らしながら、さっきとは打って変わってニッコリと優しく微笑んだ。

「そんなに緊張しないでいいよ、橘茉莉香さん。俺とキミって共通点多いんだからさ」

「共通点……?」

「同い年だし同郷だし。ついでに言うと同じ中学校だったんだよなぁ。おれは卒業と同時に引っ越したけど」

心臓がものすごい音を立てて動いているのが自分でもわかる。

「卒業式の日さぁ、俺、当時付き合ってた彼女に振られたの」

彼を見た瞬間に不思議な感覚に襲われた意味も。

「別れたくないーって縋ったけど、そりゃもうポイ捨てみたいにさ」

名前を呼ばれた時の動機も。

「ああ、そんなことよりも名前だったね」

今現在のこの鼓動も。

「藤瀬真斗と申します。以後よろしく」

全ては……心の奥底にあった彼の記憶がそうさせたものだったんだ。