純真~こじらせ初恋の攻略法~

由加里と話した内容については、二人には要点だけ掻い摘んで話してある。

それが原因で私の心の不安や、信じるエネルギーが切れてしまったということも伝えた。

私の心情を汲み取ってくれた二人は、私の出した決断を否定することなく受け止めてくれた。

藤瀬くんが引っ越す前にはちゃんと二人で話すと言ったけれど、今日藤瀬くんとの関係を終わりにするなんてことは話していない。

それでも私の些細な変化を察し、こうやって私の隣で静かに勇気を分けてくれる二人の優しさに、卒業式では出ることのなかった涙が込み上げてくる。

「亜弓、奈緒。私……藤瀬くんにちゃんと笑顔でサヨナラ言ってくるね」

ぽろぽろとこぼれた涙を見て、奈緒はそっとハンカチを差し出してくれた。

「無理に笑顔なんて見せなくてもいいんだよ?」

そう言った奈緒に同調して、亜弓も「そうだよ」と声を荒らげた。

「十分激怒していいレベルなんだからっ。藤瀬くんは言葉が足りなさすぎだよね。茉莉香にこんな思いをさせるなんて。私が代わりにぶっ飛ばしてやりたい」

自分の拳をパシンと手のひらに打ち付けながら、亜弓は物騒なことを言った。

二人の気持ちはとても嬉しいものだ。

けれど私にも貫きたい思いがある。

「私の本当の気持ちなんて、絶対に言ってやんない。藤瀬くんだって本当のこと隠してたんだから。これは私の女としての意地なの」

そう、最後くらい。

『か弱い女子』じゃなくて『強い女』を演じたいんだ。

「わかったよ」

「行ってこいっ」

二人に背中を押してもらい、私は靴を履き替えてグラウンドへと向かった。