「卒業証書授与!」
体育館に響いた先生の声に、未だ卒業の実感がわかないまま、私はこの日を迎えることになった。
由加里から衝撃的な紅白を受けたあの日から三日。
私は自分がどうやってこの三日間を乗り切ったのか思い出せないほど落ちていた。
藤瀬くんから何度も着信があったけれど、私は出ることも当然ながら折り返すこともしなかった。
自分勝手だよ、藤瀬くんは。
私が声が聞きたくて連絡した時は、折り返しもくれなかったりしたくせに。
今、私がこんな気持ちになってから電話してくるなんて。
家にも二度ほど来てくれたようだったが、母親にいないと言ってもらうようにお願いし、彼と会うことを拒絶した。
藤瀬くんの顔を見てしまったら、自分がどうなるのか想像もできなかったから。
大好きな藤瀬くん。
初めて本気で人を好きになるという意味を教えてくれたのは藤瀬くんだった。
だからこそ。
藤瀬くんに恨みつらみをぶちまけたくない。
もう会えなくなるのなら、ぐちゃぐちゃな泣き顔なんて見せたくない。
こんなことになってしまっても、やっぱり嫌いになることなんてできないから。
やっぱり好きだという気持ちに変わりはないから。
無様で惨めな私を見られたくない。
だから今日で最後にしよう。
私はそう決めていた。


