純真~こじらせ初恋の攻略法~

それを認めてしまったら、今までのことが全て壊れてしまいそうだ。

どこからどこまでが本当のことだったの?

それとも……本当のことなんてなかったの?

「可哀想な茉莉香。何も知らなかったくせに。なにも教えてもらえなかったくせに、彼女って形だけに拘って」

やめて。

今そんなこと言われてしまったら、もう何一つ信じられなくなってしまう。

「茉莉香って真斗の何だったんだろうね?」

もうやめて。

お願いだから……。

「お飾りの彼女って……ウケる」

きゃはっ!と声を上げた由加里を、私はもう許す事ができなかった。

パンッと乾いた音が響き、次第に自分の右の掌が痺れるのがわかる。

そして私は気が付いた。

無意識に由加里の頬をひっぱたいてしまっていたということに。

左頬を赤く染めた由加里は、怒るどころか勝ち誇った顔をしていて。

明らかに負け犬の顔をしているのは自分だと悟った。

私は惨めでみっともない。

こんな醜態を由加里なんかに晒したくない。

私は謝ることもしないまま、顔を伏せてその場を後にした。

家に帰っても何をしていても、私のなかから由加里の言葉が消えることはなかった。

代わりに消えてしまったのは、藤瀬くんとの大切な大切な思い出たち。

色を失い亀裂が入って。

そして粉砕してしまった。

砕け散った私と藤瀬くんの笑顔は、きっともう二度と戻ることはないのだと痛感した。