純真~こじらせ初恋の攻略法~

まだ未成年で、ましてや義務教育中。

そんな子どもにできることなんて、きっと何一つないだろう。

それがわかるからこそ、私は必死に涙が溢れそうになるのを堪えた。

「何度も茉莉香に言おうと思った。細かい事情は言わないで、転校のことだけでも伝えようって。でもどうしても言えなかった」

言ってほしかった。

ちゃんと藤瀬くんの口から聞きたかった。

けれどあの頃の私が藤瀬くんからその報告を聞いていたら、きっと『何で』『どうして』『嫌だ』の嵐だったと思う。

そうなれば藤瀬くんは家庭の事情も口にせねばならないし、彼を追い込んで大きく傷付けたことだろう。

今となっては、あの時に聞かなくてよかったのでは、と思えた。

「結局俺は、自分のことしか考えられなかったんだよ。茉莉香に親父の左遷で転校なんて話したら引かれるんじゃないか。惨めな俺を見てほしくない。そんな保身的な事ばかり考えてたんだ」

そうだったのか。

藤瀬くんの気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が締め付けられるようだ。

「そんなことで引いたりしないのに。でも藤瀬くんんがそう考える気持ちはわかる気がする」

誰しも弱い自分は見られたくない。

隠せるものなら隠し通したい。

そう考えるのは、人間として自然な事だろう。

少なくとも私はそう思ってしまう人間だから。

再会後も藤瀬くんにだけは分厚い仮面をかぶっていたのだ。