純真~こじらせ初恋の攻略法~

私の必死な願いは届いてくれはしないのか。

藤瀬くんは無言で私を見つめたまま微動だにしない。

悩んでくれているのならば何時間でも待つ。

けれど、これ以上踏み込むなという意味での沈黙であるならば、私は金輪際、藤瀬くんに関わってはいけない。

あまりの緊張に耐えられなくなり、視線を下に落とした時。

「あの頃の俺はどうしようもないくらい子どもだったんだ」

藤瀬くんが低く、ゆっくりとした口調で話し始めてくれた。

私は顔を上げ藤瀬くんを見ると、胸が張り裂けそうなくらいに切ない表情を浮かべた藤瀬くんがそこにいて。

ほんの一瞬でも『話してくれて嬉しい』と思った自分を恥じた。

「俺は自分の人生、甘く見てた。毎日が楽しくて、大好きな子とも付きあえて、最高に気の合う友達もいて、成績だってそこそこよくて。なんの障害もなく進路決めて卒業して高校生になって……。そんな人生が当たり前にあると思ってた」

それは誰しもが思うことで、決して甘く見ているということではないだろうが。

「中三の秋、本格的に進路を決めないといけなくて焦ってた時だった。どの志望校を親に伝えてもいい返事が貰えなくてさ。志望校を決定できないのがクラスで俺一人になっても、両親は俺の志望校に同意してくれなかった」

夢を見付けて志望校を選び、それに対して熱く語って笑っている私の隣で、藤瀬くんはいったいどんな気持ちでいたのだろう。

やっとできた将来の夢に浮かれて。

希望した高校に向かって必死で勉強して。

学校の帰り道、ノートの裏に私の理想の家と庭を描いて渡したりして。

本当はあの頃も今みたいに切なく笑っていたのだろう。

しかし私はそれを気に留めることもなく、藤瀬くんのみの周りも自分と同じように円滑に運んでいると信じて疑わなかった。