純真~こじらせ初恋の攻略法~

藤瀬くんに慰めてもらって。

藤瀬くんに励ましてもらって。

藤瀬くんに優しくしてもらったのに。

それでもまだ足りなくて。

声が聴きたくて、顔が見たくて、この手で触れたかった。

そしてあわよくば……。

抱きしめてほしかったんだ。

そんな思いがあったからなのか、私は無意識に藤瀬くんの元に駆け寄る。

すると藤瀬くんは、躊躇することなく私を力いっぱい抱きしめてくれた。

「おかえり……」

優しく響いた言葉に、「ただいま……」と返して藤瀬くんの背中に回した腕に力を込める。

もう私はそれだけで。

本当にそれだけで、全てが浄化された気がした。

ゆっくりと頭を撫でられると、まるで子猫のように喉を鳴らしてしまいそうだ。

それくらい藤瀬くんの腕の中は、温かくて気持ちが落ち着く。

遠い昔に抱き合った時は、お互いに体の大きさなんて変わらなかったのに。

今では私なんてすっぽりと包まれてしまう。

この優しい腕の中が私のものだったらいいのに。

そんなことを思ってしまった。

私を包んでくれていた腕の力が抜け、そっと身体が離される。

藤瀬くんの顔を見てしまったら、優しさに付け込むように懇願してしまいそうで、私はそのまま俯いた。

この状況に付け込むのは狡い。

きっと藤瀬くんは傷付いた私の望みなら、大抵のことは聞いてくれるから。

「来てくれてありがとう」

いやらしく女の武器を使ってしまう前に、私は藤瀬くんから一歩離れてそう言った。

「迎えに来てやれなくてごめん」

私の身体から離れた手が、ギュッと拳を作るのが見える。

藤瀬くんが本気で心配してくれているということを、身をもって感じる事ができただけで、今の私には十分だった。