最寄り駅に到着すると、そこはもうすっかりいつもの日常だった。
都心に向かう人波を逆走するように歩くだけで、まるで一仕事したかのように疲れてしまう。
駅から自宅まで、徒歩20分強の距離。
それを歩く気力もなく、財布の所持金と相談の結果、再びタクシーで移動することに決めた。
後部座席に乗り込むと、身体は鉛のように重いというのに、目だけはしっかりと冴えている。
こんな時間に見慣れた光景を逆走しているせいなのかもしれない。
こんなふうに車窓を眺めていると、昨夜の出来事が夢だったのではないかと思い始めるのだから不思議だ。
どうやら私の思考回路は大きく崩れてしまったみたいだ。
もう何も考えまい。
今考えたところできっと、全て間違った方向に向かうに違いないのだから。
普段歩けばそれなりの時間が掛かるものだが、車となると5分そこそこしかかからないものだ。
タクシーはあっという間に自宅マンションに到着した。
料金を支払い、「近くですみません」と一声かけて降りると、タクシーは扉を閉めると同時に出発した。
なんとなく取り残されたような気持ちになり、私は深い溜め息をついてマンションに入り、エレベーターに乗り込んだ。
8階に到着し自分の部屋の前に行く途中で、私の部屋の玄関先に濃紺のスーツを着た男性の後姿が見えた。
一瞬脳裏に湯川さんの顔が浮かんだが、彼より早くチェックアウトしたことを思い出し、彼を頭から追い出す。
コツ……と鳴った私のヒール音に振り返ったスーツの男性は。
「茉莉香……」
藤瀬くん……その人だったのだ。
都心に向かう人波を逆走するように歩くだけで、まるで一仕事したかのように疲れてしまう。
駅から自宅まで、徒歩20分強の距離。
それを歩く気力もなく、財布の所持金と相談の結果、再びタクシーで移動することに決めた。
後部座席に乗り込むと、身体は鉛のように重いというのに、目だけはしっかりと冴えている。
こんな時間に見慣れた光景を逆走しているせいなのかもしれない。
こんなふうに車窓を眺めていると、昨夜の出来事が夢だったのではないかと思い始めるのだから不思議だ。
どうやら私の思考回路は大きく崩れてしまったみたいだ。
もう何も考えまい。
今考えたところできっと、全て間違った方向に向かうに違いないのだから。
普段歩けばそれなりの時間が掛かるものだが、車となると5分そこそこしかかからないものだ。
タクシーはあっという間に自宅マンションに到着した。
料金を支払い、「近くですみません」と一声かけて降りると、タクシーは扉を閉めると同時に出発した。
なんとなく取り残されたような気持ちになり、私は深い溜め息をついてマンションに入り、エレベーターに乗り込んだ。
8階に到着し自分の部屋の前に行く途中で、私の部屋の玄関先に濃紺のスーツを着た男性の後姿が見えた。
一瞬脳裏に湯川さんの顔が浮かんだが、彼より早くチェックアウトしたことを思い出し、彼を頭から追い出す。
コツ……と鳴った私のヒール音に振り返ったスーツの男性は。
「茉莉香……」
藤瀬くん……その人だったのだ。


