純真~こじらせ初恋の攻略法~

藤瀬くんの電話のおかげで少しは安心して眠ることができた。

けれど目覚めは早く、湯川さんがこのホテルに滞在していると思うと、一刻も早くここから逃げ出したかった私は、用意を終わらせてチェックアウトをすませる。

六時の始発に乗るべくタクシーに滑り込み、離れていくホテルを後ろに感じて安堵した。

まさかの一泊出張になってしまったし、湯川さんとはこんなことになってしまったし。

正直言って最悪のアシスタント代理になってしまった。

しかし湯川さんから何も学ばなかったわけじゃない。

仕事相手との交渉術は、確かに素晴らしかったし、それは認めざるを得ないだろう。

だからといって昨夜のことは、ずっとしこりとなって残っていく。

湯川さんはこのことに関してどうするかは私の判断に任せると言っていた。

きっと退職も覚悟していることだと思う。

湯川さんの人生が自分の判断一つで決められるなんて。

他人の言葉に感情を乱されて、取り返しのつかないことをしてしまうとは。

湯川さんはつくづくバカな男だ。

そんなこと思っていると、タクシーはいつの間にか駅に到着していた。

窓口で切符を購入し、パン屋さんのイートインスペースで朝食を済ませてホームへ向かう。

電車内に乗り込み、運よく取れた自由席の座席に座り、一息ついた。

最寄り駅に着いたら家に帰って少し休もう。

もともと会社も天候不良による一泊を了承しているのだそうで、昼からの出社でいいと藤瀬くんも言っていた。

嫌なことは忘れ藤瀬くんの声を思い出しながら、私はゆっくりと目を閉じた。